はじめに
マイクロコンピュータを使用した製品や、プリント基板製作のコンサルタントをさせていただきます。 大体の手順を思いつく限りにまとめてみました。 マイクロコンピュータ応用製品は様々な分野に使われていて、それぞれに解決すべき課題が発生します。 30年を超える経験が何かにお役に立てば幸いです。
仕様の整理
電源 バッテリ、商用電源、太陽電池
入力となる信号 スイッチ、センサー(温度、湿度、PH,TOF距離センサー)、他の装置からデジタル通信での入力、アナログ信号
出力 モータなどの動力制御出力、接点信号、アナログ出力
表示 LED表示灯,液晶表示(文字列、グラフィック)、音声表示 最近ではWifiでパソコンやスマフォのウエブブラウザで表示するケースが増えてきています。
ソフト概要 どの程度の計算処理能力が必要か
使用環境 室内、屋外、動作温度範囲
形状 大きさや特殊な形状が必要か
マイクロコンピュータの選定
バッテリだけで1年間動作させるような省エネが必要であれば8Bitの小さなマイコンを選定します。 WEBサービスが必要だったりすれば、高度の処理能力をもったCPUや周辺回路まで組み込まれたボードをお勧めします。
周辺回路
入出力信号に合わせた周辺回路が必要になります。 回路や部品の選定に関するアドバイスを行います。 特にアナログ信号は必要な精度のアナログ処理を行うにあたり、部品選定、回路の選定が重要になります。 また、オーバースペックの回路を使ってしまうとコストダウンに苦労することになります。また精度や高速性を得るためにCPU内臓のAD変換器が使えるのかといった判断が必要になります。
コンピュータボード応用 RasPi、ESP32
WEBサービスをしたり、AI処理が必要になる場合は高速なCPUと周辺チップを搭載したCPUボードを使用することができます。 しかし、こうしたボードは産業用として開発されているわけではなく、CPUは相当な温度(60℃を超えるような)になったりします。 製品として使用するためには使用温度範囲を考えながら放熱の設計が重要になります。
簡単な実験や試作にはArduinoIDEで開発できるボードがあります。 WiFi通信やWEBサービスも比較的簡単に実装できます。
組込みソフトウエア
マイコンのプログラム開発はメーカーごとに異なる開発環境でプログラムの作成、デバッグを行います。 マイコンの選定はソフトウエアの開発環境も考慮する必要があります。
FPGA
ワンチップマイコンでは数MHzまでの動作が可能です。 例えば数10MHzを超えるアナログ信号をとらえようとすると、マイコンでの処理では間に合いません。 こうした場合には高速のADコンバータとFPGAを組み合わせることが必要になります。 私は3GHz8bitのAD処理の経験があります。 FPGAを使用するような高速回路に関してもアドバイスができます。
無線通信 WiFi, Bluetooth, LTE, LPWA
WiFi,Bluethoothを持ったモジュールが入手しやすくなってます。 マイコンでの演算結果を無線で送ったり、WEBサービスを内蔵して、スマフォやパソコンに表示するといった応用ができます。 遠隔地からのデータをLTE(形態の電波形式)を使ってクラウドサーバーに送り表示させることができます。 LPWAは伝送速度は遅いですが数Kmの伝送ができます。 省電力の設計に適合していてバッテリだけで数年間動作させることができます。 また、PrivateLoRaはLTEと違って通信費がかからないといったメリットがあります。
評価試験
電子回路で製品を完成するためには性能を評価し、安全性を確認する試験が必要になります。 思いつくまま上げますと以下のようになります。
絶縁、耐圧試験
電源変動試験、緩慢変動、瞬停
電源負担測定、内部電源電圧電流測定
入出力動作試験、通信試験
温度試験(内部温度上昇測定)
EMC試験 EMI,EMS 静電気放電試験
電源ノイズ試験
耐雷試験
工場自動化、予防保全
既存の設備に通信機能を付加して、集中制御をさせることができます。 通常のロボットを使用するためには、安全のため人の働く場所と厳重に隔離する必要があります。 人の作業環境で使用できる協同ロボットを使えば、隔離用の柵が不要となり、省スペースで工場の大幅なレイアウト変更を行わずに導入できます。
機械の保全において、例えば振動を監視しておけば故障の予兆を把握できます。 定期的な保全に比べて無駄な部品交換が必要なく、保全に伴うコストを抑えることができます。